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【2020年】京都大学入試解答速報掲示板【京大解答速報】 - 京都大学掲示板
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【2020年】京都大学入試解答速報掲示板【京大解答速報】


0名前を書き忘れた受験生 2017/06/06 20:45  258562view
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2020年京大入試難易度アンケート
https://www.5ka9.com/2020/02/2020kyoto.html


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962中島敦夫 2020/03/06 04:50
声に出して読みたい京大入試2020(「山月記」より)
 浪人の李徴は博学才穎、平成の末年、現役にして番号を合格者発表の掲示板に連ね、ついで慶応生に補せられたが、性、狷介、自ら頼むところすこぶる厚く、慶大生に甘んずるを潔しとしなかった。いくばくもなく大学を退いたのちは、故山、*略に帰臥し、同級生と交わりを絶って、ひたすら勉学にふけった。私大生となって長く膝を学歴コンプの前に屈するよりは、一浪京大生としての名を死後百年に遺そうとしたのである。しかし、成績は容易に上がらず、メンタルは日を追うて苦しくなる。李徴はようやく焦燥に駆られてきた。このころからその容貌も峭刻となり、肉落ち骨秀で、眼光のみいたずらに炯々として、かつて私大に入学した頃のウェーイなイキリ大学生のおもかげは、いずこに求めようもない。数浪ののち、プライドに堪えず、世間体のためについに節を屈して、再び東へ赴き、いちFラン地方大学に籍を置くことになった。一方、これは、己の学業に半ば絶望したためでもある。かつての同級生は既にはるか高学年に進み、彼が昔、鈍物として歯牙にもかけなかった指定校の連中にマウントを取られることが、往年の俊才李徴の自尊心をいかに傷つけたかは、想像に難くない。彼は怏々として楽しまず、狂悖の性はいよいよ抑え難くなった。一年ののち、旅に出、鴨川のほとりに宿ったとき、ついに発狂した。ある夜半、急に顔色を変えて寝床から起き上がると、何かわけのわからぬことを叫びつつそのまま下に飛び降りて、闇の中へ駆け出した。彼は二度と戻ってこなかった。付近の山野を捜索しても、何の手がかりもない。その後李朝がどうなったかを知る者は、誰もなかった。

 翌年、現役京大、大和の袁*という者、教授の命を奉じて吉野山の嶺南にフィールドワークし、途に阿知賀の地に宿った。次の朝まだ暗いうちに出発しようとしたところ、宿の女将が言うことに、これから先の道に人食いゴリラが出るゆえ、旅人は昼でなければ、通れない。今はまだ朝が早いから、いま少し待たれたがよろしいでしょうと。袁*は、しかし、教授の奴隷仲間の多勢なのを恃み、女将の言葉を退けて、出発した。残月の光をたよりに林中の草地を通って行ったとき、果たして一体の猛ゴリラが叢の中から躍り出た。ドラミングしながら。ゴリラは、あわや袁*に躍りかかるかと見えたが、たちまち身を翻して、もとの叢に隠れた。叢の中から人間の声で「危ないところだった。」と繰り返しつぶやくのが聞こえた。その声に袁*は聞き覚えがあった。驚懼のうちにも、彼はとっさに思いあたって、叫んだ。「その声は、我が友、李徴子ではないか?」袁*は李徴と同時に模試の冊子に載り、友人の少なかった李徴にとっては、最も親しい友であった。穏和な袁*の性格が、峻峭な李徴の性情と衝突しなかったためであろう。
 
 叢の中からは、しばらく返事がなかった。しのび泣きかと思われるかすかな声が時々漏れるばかりである。ややあって、低い声が答えた。「いかにも自分は隴西の李徴である。」と。

 袁*は恐怖を忘れ、馬から降りて叢に近づき、懐かしげに久闊を叙した。そして、なぜ叢から出てこないのかと問うた。李徴の声が答えて言う。自分は今やゴリラの身となっている。どうして、おめおめと故人の前にあさましい姿をさらせようか。かつまた、自分が姿を現せば、必ず君に畏怖嫌厭の情を起こさせるに決まっているからだ。しかし、今、図らずも故人に会うことを得て、愧赧の念をも忘れるほどに懐かしい。どうか、ほんのしばらくでいいから、我が醜悪な今の外見を厭わず、かつて君の友李徴であったこの自分と話を交わしてくれないだろうか。

 後で考えれば不思議だったが、そのときの袁*は、この超自然の怪異を、実に素直に受け入れて、少しも怪しもうとしなかった。彼は部下に命じて行列の進行をとどめ、自分は叢の傍に立って、見えざる声と対談した。京の噂、旧友の進学先、袁*が現在の地位、それに対する李徴の祝辞。学生時代に親しかった者どうしの、あの隔てない語調で、それらが語られた後、袁*は、李徴がどうして今の身となるに至ったかを尋ねた。叢中の声は次のように語った。

 今から一年ほど前、自分が旅に出て鴨川のほとりに泊まった夜のこと、一睡してから、ふと目を覚ますと、戸外で誰かが我が名を呼んでいる。声に応じて外へ出てみると、声は闇の中からしきりに自分を招く。覚えず、自分は声を追うて走り出した。無我夢中で駆けていくうちに、いつしか途は山林に入り、しかも、知らぬ間に自分は左右の手でバナナを掴んで剥いていた。何か身体じゅうに力が満ち満ちたような感じで、軽々と岩石を飛び越えて行った。気がつくと、手先や肱のあたりにけを生じているらしい。少し明るくなってから、谷川に臨んで姿を映してみると、既にゴリラとなっていた。自分は初め目を信じなかった。次に、これは夢に違いないと考えた。夢の中で、これは夢だゾと知っているような夢を、自分はそれまでに見たことがあったから。どうしても夢でないと悟らねばならなかったとき、自分は茫然とした。そうして懼れた。まったく、どんなことでも起こりうるのだと思うて、深く懼れた。しかし、なぜこんなことになったのだろう。分からぬ。まったく何事も我々には分からぬ。出題意図も分からずにおしつけられた問題をおとなしく受け取って、取っ掛かりも掴めずに書き殴るのが我々受験生のさだめだ。自分はすぐに死を想うた。
…(中略)…

 おれの中の学歴コンプがすっかり消えてしまえば、おそらく、その方が、おれはしあわせになれるだろう。だのに、おれの中の学歴コンプは、そのことを、このうえなく恐ろしく感じているのだ。ああ、まったく、どんなに、恐ろしく、哀しく、切なく思っているだろう!おれが学歴コンプだった記憶のなくなることを。この気持ちは誰にも分からない。おれと同じ身の上になった者でなければ。
…(中略)…

 恥ずかしいことだが、今でも、こんなあさましい身と成り果てた今でも、おれは、おれの受験番号が京都大学の合格者発表の掲示板に載っているさまを、夢に見ることがあるのだ。岩窟の中に横たわって見る夢にだよ。嗤ってくれ。京大生になりそこなってゴリラになった哀れな男を。(袁*は昔の学生李徴の自嘲癖を思い出しながら、哀しく聞いていた。)
…(中略)…

 なぜこんな運命になったか分からぬと、先刻は言ったが、しかし、考えようによれば、思い当たることが全然ないでもない。受験生であったとき、おれは努めて人との交わりを避けた。人々はおれを倨傲だ、尊大だと言った。実は、それがほとんど羞恥心に近いものであることを、人々は知らなかった。もちろん、かつて郷党の神童と言われた自分に、自尊心がなかったとは言わない。しかし、それは臆病な自尊心とでもいうべきものであった。おれは京大合格によって名を成そうと思いながら、進んで予備校に通ったり、求めて学友と交わって切磋琢磨に努めたりする事をしなかった。かと言って、また、おれは俗物の間に伍することも潔しとしなかった。ともに、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心とのせいである。おのれの珠に非ざることを惧れるが故に、敢て刻苦して磨こうともせず、又、己の珠なるべきを半ば信ずるが故に、碌々として瓦に伍することも出来なかった。己は次第に世と離れ、人と遠ざかり、憤悶と慙恚とによって益々己の内なる臆病な自尊心を飼いふとらせる結果になった。人間は誰でも猛獣使であり、その猛獣に当るのが、各人の性情だという。己の場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。ゴリラだったのだ。これが己を損い、両親を苦しめ、友人を傷つけ、果ては、己の外形をかくの如く、内心にふさわしいものに変えて了ったのだ。今思えば、全く、己は、己の有っていた僅かばかりの才能を空費して了った訳だ。試験時間は何事も為さぬにはあまりに長いが、問題を解ききるにはあまりにも短いなどと口先ばかりの警句を弄しながら、事実は、才能の不足を暴露するかも知れないとの卑怯な危惧と、刻苦を厭う怠惰とが己の凡てだったのだ。己よりも遥かに乏しい才能でありながら、それを専一に磨いたがために、堂々たる京大生となった者が幾らでもいるのだ。ゴリラと成り果てた今、己は漸くそれに気が付いた。それを思うと、己は今も胸を灼かれるような悔いを感じる。己には最早人間としての生活は出来ない。たとえ、今、己が頭の中で、どんな優れた答案を作ったにしたところで、どういう手段で点数を上げられよう。まして、己の頭は日毎にゴリラに近づいて行く。どうすればいいのだ。己の空費された過去は? 己は堪らなくなる。そういう時、己は、向うの山の頂の巖に上り、空谷に向って吼える。この胸を灼く悲しみを誰かに訴えたいのだ。己は昨夕も、彼処で月に向って咆えた。誰かにこの苦しみが分って貰えないかと。しかし、獣どもは己の声を聞いて、唯、懼れ、ひれ伏すばかり。山も樹も月も露も、一匹のゴリラが怒り狂って、哮っているとしか考えない。天に躍り地に伏して嘆いても、誰一人己の気持を分ってくれる者はない。ちょうど、受験生だった頃、己の傷つき易い内心を誰も理解してくれなかったように。己の毛皮の濡れたのは、夜露のためばかりではない。

 漸く四辺の暗さが薄らいで来た。木の間を伝って、何処からか、暁角が哀しげに響き始めた。
…(中略)…

 そうして、付け加えて言うことに、袁*が嶺南からの帰途には決してこの途を通らないで欲しい、その時には自分が酔っていて故人
を認めずに襲いかかるかも知れないから。又、今別れてから、前方百歩の所にある、あの丘に上ったら、此方を振りかえって見て貰いたい。自分の得点開示をお目に掛けよう。勇に誇ろうとしてではない。我が醜悪な点数を示して、以て、再び此処を過ぎて自分に会おうとの気持を君に起させない為であると。
袁*は叢に向って、懇ろに別れの言葉を述べ、馬に上った。叢の中からは、又、堪え得ざるが如き悲泣の声が洩れた。袁*
も幾度か叢を振返りながら、涙の中に出発した。
 
 一行が丘の上についた時、彼等は、言われた通りに振返って、先程の林間の草地を眺
めた。忽ち、一匹の虎が草の茂みから道の上に躍り出たのを彼等は見た。虎は、既に白く光を失った月を仰いで、二声三声咆哮
したかと思うと、又、元の叢に躍り入って、再びその姿を見なかった。

※本寄稿者は、中島敦先生をリスペクトしています。

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