日大問題　現役学生「膿を出し、リセットしてほしい」

日大問題　現役学生「膿を出し、リセットしてほしい」 - 日本大学掲示板

0高卒に馬鹿にされる日大

2021/12/19 14:25 　312view

日本大学の田中英寿前理事長や元理事が、東京地検特捜部に逮捕された一連の事件では、億単位の大学の資金が“私物化”されていた疑惑が明らかになった。逮捕後の報道でも、田中前理事長や元理事らの不正行為が次々と発覚した。ただ、この事件、誰が一番の“被害者”だったのか。日大に通い続けた一人の大学生は、私たちの取材に「怒り」をぶつけた。

■「２５９万２０００円」「４年前の自分が入学したいかと聞かれると…躊躇する」

一連の事件について、日大の学生は何を思うのか。私たちは、学生の生の声を聞こうと、現役の学生を探し続けていた。しかし、コンタクトが取れたとしても「日大職員が飛ばされた話を聞いた」「大学に目を付けられるのが怖い」と断られるばかりで取材は難航した。こうした中、ツイッター上にある投稿を見つけた。

「コロナ禍で授業がオンラインになっても変わらない学費を納めてきた学生の怒りを考えたことあるのか」。

私は、ダイレクトメッセージを送り取材を申し込んだ。学生は「話したいことが山ほどある」と取材を引き受けてくれた。

取材に応じてくれたのは、日大芸術学部の４年生、安室翔偉さん（２２）。小説を書いてみたい、スポーツが好きなのでスポーツライターも目指してみたいと、必死の思いで勉強し、第一志望の「日芸」に入学した。
「同級生で賞を受賞した友人もいる。日芸に４年間通って、そこで得た仲間や環境とか、本当に素晴らしい大学だと思います」と嬉しそうに語った。ボートレースの人間味あふれるドラマが好きで、卒業制作はボートレース小説を執筆した。
ただ、４年間の学費は６００万円以上に上った。その大半は両親が支払ってくれているが、中学３年生と大学１年生の弟２人の学費もある。母も子供たちの学費の足しにとパートで働いていたが、先日乳がんが見つかり闘病生活に入ることに。安室さんは、アルバイト代を就活用のスーツなど自分の身の回りの必要なものの購入に充てていて、贅沢はしないよう心がけているのが伝わってきた。
インタビューの最中、安室さんはカバンから「２５９万円２０００円」と書かれた紙を取り出して見せてくれた。奨学金の借用金額の総額だった。
安室さんはカメラを前に、こみ上げる怒りを抑えて話した。

「お金を返して欲しいっていうのが一番の気持ちです」
「コロナ禍でオンライン授業が主となる中で、変わらない学費を払わせているのに、不正に利益を溜め込んでいたというのは理解できない」

そして、こうも加えた。
「４年前の自分が入学したいかと聞かれれば…躊躇する状況だ」

■母「その人たちが裕福になるために学費は払ってない」

さらに、息子のためにパートで働き続けてきた母も取材に応じてくれた。母は、これまで働いてきた理由を「子供が学費の事ばかり考えてバイトをするのは、あまり良くないかなと」「今しか出来ないことを体験してもらいたいので、学費についてはなるべく親が手伝いたかった」と話した。しかし、今後は闘病のため以前のように働けなくなる。「身体の事が不安でしょうがない」と打ち明けたが、その一方で「これから奨学金として借りたお金を払い続ける息子が気がかり」とも話した。
そして、逮捕された田中前理事長らについては、「その人たちが裕福になるために学費を払い続けてきたわけではない」「正直、許せない」と憤った。

■「膿を出し切って」

日大は１２月１０日夜、記者会見を開き、加藤直人新理事長が謝罪した上で、「田中前理事長と永久に決別する」と宣言した。そして、田中前理事長に退職金を支払わないことや、外部有識者でつくる「日本大学再生会議」を立ち上げることなどを表明した。会見は、２時間以上に及んだ。この会見を現役の学生である安室さんは、どう受け止めたのか。
安室さんの答えは明確だった。

「『自分たちには、責任がないんですけども』と話しているような印象をうけた」
「膿を出しきりたいなら、徹底的に答えるべきだった」
「不正に使っていたお金を過去にさかのぼって調べるという話がないのは気がかり」

そして「一番被害を被っている学生が『こういう風に変えていってほしい』と発言できる場をつくってほしい」などと訴えた。
２０２２年３月に卒業する予定の安室さん。後輩のためにも大学は変わらなければいけない、と言う。「今は『日大なんだ』とレッテルを貼られてしまう。今後どういう影響があるのか、不透明なままの不安が続いている。後輩たちがこういう状況になっても『やはり入学して良かった、楽しい』と言っている姿をみたい。本当に膿を出し切るというか、一度、日大をリセットしてほしい」。
こうした学生の声に日大はどう答えるのか。学生が心から安心して学べる環境をつくれるのか、今後も日大の行方を取材していきたいと思う。