2026年ノーベル生理学・医学賞は「光遺伝学」の3人に ダイセロス氏・ヘーゲマン氏・ナーゲル氏、日本人の受賞はならず
藻類の光センサー「チャネルロドプシン」を見つけ、光で神経細胞をオン・オフする方法を開いた。物理学賞から経済学賞までの5賞は10月12日までに発表

カロリンスカ研究所(スウェーデン)のノーベル会議は2026年10月5日(月)、2026年のノーベル生理学・医学賞を、米国のカール・ダイセロス氏、ドイツのペーター・ヘーゲマン氏とゲオルク・ナーゲル氏の3人に贈ると発表した。授賞理由は「光で開閉するイオンチャネルと光遺伝学に関する発見」。光を当てて、ねらった神経細胞の活動をオン・オフできる「光遺伝学(オプトジェネティクス)」の基礎を築いた。日本人の受賞はなかった。
ヘーゲマン氏とナーゲル氏は、単細胞の藻類から光で開くタンパク質「チャネルロドプシン」を見つけた。ダイセロス氏は、このタンパク質を神経細胞のスイッチとして使えるようにした。ノーベル会議は、3人が「神経科学の新しい時代の基礎を築いた」としている。

受賞者と授賞理由
| 受賞者 | 所属 | 生まれた年 |
|---|---|---|
| カール・ダイセロス(Karl Deisseroth) | ハワード・ヒューズ医学研究所、スタンフォード大学(米国) | 1971年 |
| ペーター・ヘーゲマン(Peter Hegemann) | ベルリン・フンボルト大学(ドイツ) | 1954年 |
| ゲオルク・ナーゲル(Georg Nagel) | ヴュルツブルク大学(ドイツ) | 1953年 |
授賞理由は、英語では「for their discoveries concerning light-gated ion channels and optogenetics」。賞金は1200万スウェーデン・クローナで、3人で等分する。受賞につながった研究は、ヘーゲマン氏がマックス・プランク生化学研究所(ドイツ・マルティンスリート)、ナーゲル氏がマックス・プランク生物物理学研究所(ドイツ・フランクフルト)にいたときのもの。
光遺伝学とは
神経細胞は、細胞膜にあるイオンチャネル(イオンを通す通り道)が開き、イオンが流れ込むことで電気信号を出す。光遺伝学では、光が当たると開くイオンチャネル「チャネルロドプシン」の遺伝子を、調べたい種類の神経細胞にだけ入れておく。そこへ光を当てると、その神経細胞だけが電気信号を出す。
ノーベル財団の一般向け解説によると、20世紀の研究で、脳のどの領域がどの働きにかかわるかは分かってきた。しかし、特定の種類の神経細胞が、ある感情や行動を直接引き起こしていることまでは証明できなかった。光遺伝学によって、生きた動物の脳で、神経細胞をねらって働かせたり止めたりできるようになった。
発見の流れ
- 1990年代初め:ヘーゲマン氏は、単細胞の緑藻クラミドモナスが光の方へ泳ぐしくみを調べた。藻の「眼点」に光が当たると、わずか0.5ミリ秒後に電気信号が生じた。ヒトの目では、光から電気信号までに少なくとも10ミリ秒かかる。ヘーゲマン氏は、1つのタンパク質が光を受け取り、イオンチャネルとしても働くと考えた
- 2000年ごろ:日本の研究者が公開していたクラミドモナスの遺伝情報の中から、ヘーゲマン氏のグループが、光を受け取るタンパク質に似た遺伝子を2つ見つけた
- 2002〜2003年:ナーゲル氏がこの遺伝子をカエルの卵に入れると、卵の細胞膜に光で開くイオンチャネルができた。「チャネルロドプシン-1」「チャネルロドプシン-2」と名付けられた。2は光を当てると0.2ミリ秒以内に開き、陽イオンが流れ込んで電気信号が生じた。2人は2003年、この結果を発表した
- 2005年:ダイセロス氏のグループが、チャネルロドプシン-2の遺伝子をラットの神経細胞(培養したもの)に入れ、青い光で神経信号を起こすことに成功した
- 2006年:この方法が「光遺伝学(optogenetics)」と名付けられた
- 2007年:ダイセロス氏のグループが、生きたマウスの脳の運動野で神経細胞を光で働かせ、ひげを動かした。光は、頭の骨の小さな穴から入れた細い光ファイバーで当てた
何が分かるようになったか
ノーベル財団の一般向け解説は、光遺伝学によって、痛み、社会的な行動、のどの渇き、食べること、報酬、注意などにかかわる神経回路が見つかったと紹介している。
2012年には、利根川進氏(1987年ノーベル生理学・医学賞)とダイセロス氏らが、記憶の「痕跡(エングラム)」を光で働かせた。恐怖を経験したマウスで記憶をつくった神経細胞を、あとで光によって働かせると、危険がなくても恐怖の反応を示した。特定の記憶に必要な神経細胞を示した初めての実験だという。
医療への応用も始まっている。網膜色素変性症(目の桿体細胞と錐体細胞が壊れる病気)で視力を失った人を対象にした臨床試験では、チャネルロドプシンに似たタンパク質を網膜に入れた人が視力の一部を取り戻し、光を出す特別なめがねを使って、机の上の物を見分けてつかめるようになった。うつ病、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病などの理解にも役立っている。
日本人の受賞は
2026年のノーベル生理学・医学賞の受賞者3人の中に、日本人はいなかった。ただ、ノーベル財団の一般向け解説では、日本の研究者が公開したクラミドモナスの遺伝情報がチャネルロドプシン発見の手がかりになったこと、利根川進氏との共同研究が紹介されている。
今週の発表日程
ノーベル財団の公式サイトによると、2026年のノーベル賞は10月5日(月)の生理学・医学賞から10月12日(月)の経済学賞まで、6日間に分けて発表される。
| 賞 | 発表日 | 発表時刻(日本時間) |
|---|---|---|
| 生理学・医学賞 | 10月5日(月) | 発表済み |
| 物理学賞 | 10月6日(火) | 18時45分以降 |
| 化学賞 | 10月7日(水) | 18時45分以降 |
| 文学賞 | 10月8日(木) | 20時以降 |
| 平和賞 | 10月9日(金) | 18時 |
| 経済学賞 | 10月12日(月) | 18時45分以降 |
公式サイトはスウェーデンの時刻(中央ヨーロッパ夏時間)で示しており、日本時間はそれに7時間を足したもの。平和賞以外は「早くてもこの時刻」とされている。発表はノーベル賞の公式サイト(nobelprize.org)でライブ配信される。
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よくある質問
Q. 2026年のノーベル生理学・医学賞は誰が受賞した?
A. 米国のカール・ダイセロス氏(ハワード・ヒューズ医学研究所、スタンフォード大学)、ドイツのペーター・ヘーゲマン氏(ベルリン・フンボルト大学)とゲオルク・ナーゲル氏(ヴュルツブルク大学)の3人。2026年10月5日に発表された。
Q. 授賞理由は?
A. 「光で開閉するイオンチャネルと光遺伝学に関する発見」。藻類のタンパク質チャネルロドプシンを見つけ、光で神経細胞をオン・オフする方法(光遺伝学)を開いたことが評価された。
Q. 光遺伝学とはどんな方法?
A. 光で開くイオンチャネル(チャネルロドプシン)の遺伝子を、ねらった神経細胞に入れておき、光を当ててその細胞だけを働かせる方法。どの神経細胞が記憶・感情・行動にかかわるかを、生きた動物で確かめられる。
Q. 日本人は受賞した?
A. 2026年の生理学・医学賞の受賞者に日本人はいなかった。
Q. ほかのノーベル賞はいつ発表される?
A. 物理学賞が10月6日(火)、化学賞が7日(水)、文学賞が8日(木)、平和賞が9日(金)、経済学賞が12日(月)。
出典
ノーベル財団(NobelPrize.org)
- Press release: The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2026(2026年10月5日、カロリンスカ研究所ノーベル会議)
- Popular information: A light-sensitive algal protein energised neuroscience
- Nobel Prize in Physiology or Medicine 2026 - Summary
- Nobel Prize announcements 2026(発表日程)
カロリンスカ研究所
(100点BBS 受験ニュース)
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